Topic 第17話 最近のトレシミュ事情 (00/09/09)

 トレインシミュレータ業界も、ここ2年くらいで新規参入が相次ぎ、競合乱立の様相を見せています。その中で注目すべきことは、各社の技術力はもちろん、どういった購買層をターゲットとしているかということであります。すなわちそれは、ゲームの難易度でありシナリオそのものです。

 トレインシミュレータが、パソコンゲームとしてユーザの満足度を得るためには、やはりそれなりのシナリオが必要でしょう。いくら忠実に再現したといっても、何の目標もないゲームは達成感が乏しく、ユーザのやる気を喚起することは難しいのではないかと思われます。

 かと言って、だれもクリアできないくらいの強烈な難度を与えてしまうと、一部のマニア以外は途中で断念することとなり、せっかく面白い内容であってもそれを堪能することなく終わってしまうでしょう。

 その意味で私は、トレインシミュレータは現実性を追求すると同時に、ゲームとしての楽しさやスリル、達成感を適度に味わえるものであって欲しいと思うのです。

 音楽館は3月に京浜東北線、7月に京阪電気鉄道を発売しました。音楽館のトレインシミュレータは、画質音質ともに抜群で、特に音質は他社製品とは比べ物にならないくらい、よく再現できています。
 しかし、京阪電気鉄道ではMac版打ち切りというショッキングな発表が尾を引いた格好で、ファンの圧倒的支持にも揺らぎが見られました。リスクを負って挑んだ新技術ですが、走行映像が一時止まるという不具合は、ユーザの不満を招く結果となってしまいました。
 また、運転中止・試験中止を廃止したことについては、より多くの人に最後まで楽しんでもらいたいという意図があったようですが、これはゲーム性の根幹部分を取り去ったに等しく、主に上級者にとっては物足りなさが残るものとなってしまいました。TS阪神でフリーモードを設けてから、徐々に初級者への妥協が目につき、シナリオのはっきりしない作品になってきているように思います。初期作品に比べ、レベルが上がる喜びや試験での緊張感、運転中止になったときの悔しさ、そして何よりゲームに熱中することがなくなったように思います。「いつでも運転できる」…そんな安心感がかえって逆効果になっているような印象です。

 ジェイアール西日本コミュニケーションズは、4月に運転大道楽と題してひかりRailStar・SLやまぐち号を発売。最新鋭の新幹線と最古参のSLという組み合わせで一発攻勢を狙いました。しかし、ひかりRailStarは途中ワープと走行音が最悪というのが致命的で、ほとんど資料的価値しか見出せないという厳しい声もあります。一方SLやまぐち号は、それなりの難度があってゲームに熱中した人もかなりいたようです。ただ、SLという我々にとってさほど身近でないものを運転したいと思う人は、やはり電車ほどは多くなく、どうしても不完全燃焼の域を超えなかったと思います。次回作はもっと身近な路線を望みます。

 阪急電鉄は8月にハラハラ発車よし!阪急3線セレクションを発売。今までに発売した神戸線・京都線・宝塚線のベスト版として、ゲーム性を練り直して登場しました。運転中にミスをすると持ち点がその場で減らされたり、時計がアナログになったりして、ゲームとしてはなかなか面白いコンセプトに仕上がっており、初級者にとっては取り組みやすい難度となっています。ただ、今作品では技術的な進歩が見られなかったこと、そして何より運転に集中するためなのか好評だった車掌機能が省略されていたのは残念でした。

 以上のことを考慮しますと、作品の技術力はもちろん音楽館がトップですが、ファンを駆り立てるようなゲーム性としては阪急電鉄が健闘していると言えるでしょう。
 音楽館の京阪電気鉄道では最初から全種別・全区間の運転が可能ですが、阪急のベスト版だと最初は京都線の梅田〜淡路しか運転できず、しかも持ち点がなくなると途中でゲームオーバーになるという制限付きです。
 しかし音楽館は、初期作品では今の阪急と同様に少しの区間しか運転できませんでした。一方、阪急は第1弾の神戸線では速度制限などがなく、今回のベスト版よりも明らかに簡単でした。つまり、音楽館は徐々に難度を下げていったのに対し、阪急は難度を上げてベスト版をリリースするという、対照的な方法でファン層を広げようとしているのです。これはなかなか興味深いことだと私は思います。
 また、音楽館は京阪電気鉄道からMac版を打ち切ってWindows版のみとして技術的進歩を図ったのに対し、阪急電鉄とJR西日本は最初Windows版のみだったのを、2作目3作目からMacにも対応したハイブリッド版としています。ある程度犠牲を払っても技術を追求するのか、あるいは逆にMacユーザをファン層に取り込んでいくのか、両者の作品に対する姿勢の違いが伺えると思います。

 音楽館は2000年10月18日に、早くも次回作となる中央線2(東京〜大月)を発売します。京阪でやや不満を残した部分をどのように改善してくるのか、またどのような新技術やゲーム性を盛りこんで展開するのか、大いに期待したいと思います。

 JR西日本と阪急電鉄は、課題となる技術力をファンの納得できるレベルに今後引き上げることができるのかに注目していきたいです。

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