| Topic 第18話 ダイヤ優先が招いた人災(00/09/23) 2000年9月11日から12日にかけて、集中豪雨が東海地方を襲い、各地で大きな被害をもたらしました。名古屋市では、たった1日でなんと600ミリ近い雨が降ったそうです。これは1年の降水量の約3分の1にあたるといいますから、ものすごい雨量だったことが伺えると思います。名古屋では新川や天白川が氾濫し、多くの家屋が浸水しました。私の住んでいる豊川市内は幸い大きな被害が見られませんでしたが、近くの川は溢れんばかりに増水していました。
町全体が冠水した西枇杷島町や、堤防が決壊したすぐ近くの名古屋市西区では、名鉄名古屋本線や犬山線の線路も冠水しました。その影響で新一宮〜栄生、上小田井〜新名古屋間は、雨が止んだ後もしばらく不通となり、全線で営業を再開したのは13日の晩遅くでした。 東海豪雨による鉄道の運転見合わせは、名鉄だけでなく、JRや新幹線、近鉄や地下鉄など、名古屋付近のほとんどすべての路線で行われました。もちろん運転見合わせそのものは致し方ないのですが、その中には”仕方ない”で済まされない事態も発生しました。それは新幹線です。 新幹線では多くの列車が駅間の線路上に立ち往生したまま動けなくなり、なんと約5万2000人の乗客が20時間余りにも渡って車内に閉じ込められるという状況になったのです。その間、乗客に対して「しばらくお待ちください」ばかりで、十分な説明が全くされなかったといいます。運転再開後、21時間遅れで到着した新幹線から降りた乗客は、「ひどかったね、JRの対応は。」「全然説明がないから、今すぐに動くかもしれないのか、当分動く見込みがないのかさえ分からない。」と不満をあらわにしていました。何かあるたびに説明不足を批判されるJR(JR東海)ですが、今回も改善することはありませんでした。 説明不足も大きな問題でしたが、そもそも新幹線が駅間に立ち往生した責任は、運転指令にありました。11日の午後から名古屋付近では断続的に運転見合わせを行っていましたが、東京や新大阪からは定刻通りに発車させていました。夕方からは名古屋で完全に運転を見合わせたにもかかわらず、午後7時ごろまで新大阪・東京から次々と列車を発車させていました。その結果が、新幹線開通以来最悪の事態となってしまったのです。新幹線が前方の列車に行く手を阻まれる格好で、数珠繋ぎになって次々と立ち往生してしまいました。これはお粗末と言うしかありません。運転指令は最低なことをしてしまったと思います。 運転指令の判断の甘さと考え方の誤り、すなわち「すぐ運転を再開できるだろう」と安易に考え”ダイヤを守ることが優先”という誤った発想がより事態を悪化させたのではないかと指摘されています。13日にはJR東海が運輸省に呼び出されて事情の説明を求められていました。今回の一件は、”不祥事”と言っても過言ではないでしょう。 なぜ、「駅間に立ち往生するかもしれない」という最悪の可能性を考えなかったのでしょうか。立ち往生しても、乗客を安全な方法ですみやかに降ろすことができるのなら話は別です。しかし、新幹線の場合は立ち往生した場合、現状だと乗客は車内にずっと”監禁”されるわけですから、深刻な状況になるはずです。立ち往生したときの対応策が何もないのに、駅間に列車を突っ込んだことは私の感覚からすれば信じられないことです。 説明不足の話に戻りますが、説明がなかったことが問題なのは新幹線の車内だけではありません。11日午後になって名古屋付近で断続的に運転見合わせが続いていたにもかかわらず、その情報は東京や新大阪から新幹線に乗ろうとする乗客にはほとんど知らされませんでした。電話での問い合わせに対しても「上りは遅れておりますが、東京発は定刻通りです。」のように無責任に対応したそうです。”東京発は定刻通りとは言ったが、新大阪着が時刻通りだとは誰も言っていない。”なんてトンチクイズをやってる場合ではありません。こうした情報不足により、乗客が何も知らずに”発車だけ定刻”の列車に乗りこみ、途中でひどい目に遭ったということなのです。きちんと情報が知らされていれば、乗客はその日の乗車を諦めたり、別の交通手段に切り替えたりすることも可能だったわけです。 今回の事態を受けて、JR東海では「雨による運転見合わせの判断方法を見直す(むやみに列車を発車させない)」「大幅な遅れが生じた場合にその状況を車内の電光表示で流して乗客に情報を伝える」などを挙げています。私はそれに加えて、 これくらい多くの人に迷惑をかけた場合、鉄道以外の普通の会社なら存続が危ぶまれるほどのダメージを受けるかもしれません。しかし鉄道、まして新幹線はどうしても乗らざるを得ない乗り物であり、「嫌だから利用しない」わけにはいきません。それだけに、不測の事態にも適切に対応できることを含めた 、サービス向上に努めていただきたいと思います。 |
(C)1999-2006 Train Topics