Topic 第21話 京福電鉄列車衝突事故を検証(01/01/03)

 2000年12月17日午後1時28分頃、福井県松岡町志比堺(しひさかい)の京福電鉄越前本線、志比堺〜東古市駅で永平寺線から本線に進入してきた上り電車と本線を進行していた下り電車が正面衝突する事故が発生し、上り電車の運転士が死亡したのをはじめ、運転士と乗客計24人が重軽傷を負いました。事故に遭われた方には心よりお見舞い申し上げます。

 この事故では、永平寺発東古市行きの上り電車がブレーキ故障で停車できず、越前本線に入って衝突してしまったとのことで、今時そのような事故が起きるのかと正直驚いてしまいました。直接の原因は、暴走した上り電車のブレーキ部品のうち、ブレーキロッドと呼ばれる金属棒が破断したということです。ブレーキロッドとは、ブレーキをかけたとき、シリンダーに送り込まれた圧縮空気の力を伝えて車輪を制動するブレーキパッドを動かす装置だそうです。この車両のブレーキロッドは、たった1つで車両すべてのブレーキを制御するため、それが壊れると全ての車輪のブレーキが動作しないようになっていたとのことです。事故車両は昭和3年(1928年)製造の古いもので、電気ブレーキやATS(自動列車停止装置)なども装備していなかったということです。

 鉄道会社が深刻な赤字に悩み、新しい車両や装置を導入できなかったことが今回の事故につながったという見方が多いですが、これだけの死傷者を出してしまったことについては、他にも要因があるようです。新聞などで報じられていることをまとめてみました。
・東古市駅で電車が止まれなかったときに緊急に進入させる「待避線」が設けられておらず、そのまま越前本線に進入するようになっていた。
・ブレーキがきかなくなったのは永平寺駅を出発してすぐなのに、上り運転士の通報が遅く(鉄道部指令区での無線の受信が遅く)、4駅目の終点東古市駅を通過する頃であった。
・上り電車が東古市駅を通過したことを知った指令区が、無線で「東古市に向かっている(下り)車両は止まれ」と緊急連絡したが、衝突した下り電車からの応答はなかった。
 このように考えますと、安全装置の不備の他に、無線連絡に関しても問題があったのではないかと思われます。こうした部分はともすれば隠れがちになりますが、無線の通信そのものに問題があった(雑音が多かったなど)のかそれを使う人に問題があった(運転士があえて無線を使えないようにしていたなど)のか、きちんと解明していただきたいと思います。

 その後の警察の調べで、鉄道営業法に基づき京福電鉄が3ヶ月ごとに実施していた車両検査にはマニュアルがなく、現場の作業員任せになっていたことが分かりました。また、破断したブレーキロッドは、1997年の定期検査のときに新品に交換された部分が含まれていて、しかも新しい部品に問題がないか検査されていなかったことも判明しました。こうした事実と事故との関係を調べるとともに、徹底した改善をしていただきたいと思います。

 あと、もし私が運転士だったら、おそらく、どこかの映画で見たように、乗客には体勢を低くし、ガラスが割れたときに備えて頭や顔を上着などで覆うように指示すると思います。ってパニック時に冷静にそんなことができるのかは分かりませんが…。いずれにせよ、自動車では、下り坂でブレーキがきかなくなったときどうするかということを教習所で習います。電車ではどうなのかな、そんな場合を想定したマニュアルはあるのかなと疑問に思った次第です。

 第9話「父の鉄道事故体験」で、昭和20年南海高野線の下り電車のブレーキがきかなくなって脱線した事故について書きましたが、50年以上たって再び同じ原因の事故が起こったことに驚かざるを得ません。この事故を機会に、鉄道会社には今一度ハード面ソフト面両方において安全性をチェックしていただきたいと思います。

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(C)1999-2006 Train Topics


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