| Topic 第50話 新幹線居眠り運転が与えた衝撃(03/03/19) (2003年3月25日更新) 「JR西日本は、同じ過ちを性懲りもなく繰り返す」。そう言いたくもなるような出来事がありました。 2003年2月26日午後3時20分頃、山陽新幹線岡山駅で、広島発東京行きひかり126号(乗客約800人、16両編成)が、本来の停止位置よりも約90メートル手前に 、後部車両がホームからはみ出す形で停車しました。運転士がなんと熟睡しており、車掌に起こされるまで記憶がなかったとのこと。自動列車制御装置(ATC)が作動し、自動的に停車したといいます。ATCが装備されていたので事故には繋がらなかったとは言え、運転士が気を失った状態で最高270km/hの高速運転を行っていたのは恐ろしいことであります。 当初は運転士の気の緩みもしくは飲酒が原因ではないかと見られていましたが、私はいくら気が緩んでも熟睡はないだろうと思いました。ウトウト眠りならともかく、熟睡なんて…。ひょっとしたら誰かに睡眠薬でも飲まされたのではないかと疑ったくらいでした。 最初に述べた「同じ過ちを…」の文言(本当は書きたくないのだ)。これは運転士が居眠りしたことよりも、発覚後のJR西日本の対応を批判したつもりです。JR西日本は発覚時に「本人が大丈夫と答えたため、運転士資格をもつ車掌が添乗し新大阪まで運転させた」と説明していましたが、それが虚偽であることが判明、実際には約24分間、 距離にして100kmに渡って一人で運転していたのです。指令所が「運転士の資格をもつ車掌が付き添うように」と列車内の車掌に指示したのに、これに従わないなどの連絡ミスがあったのです。しかも指令所が 確認を怠って列車内の状況をきちんと把握しておらず、今回の虚偽の発表に繋がったようです。なんともお粗末、恥の上塗り、駄目だねこれじゃあ。2002年11月には指令所が事故現場の状況を把握せずに運転を再開させて二重事故を起こしたばかり。私は、JR西日本がまた同じ過ちを繰り返してしまったなと思ったわけです。 結局は、日常のコミュニケーションがきちんと取れていないから、いざというときにボロが出てしまう。どんなにミスをしても潰れることのないこの会社は、反省すること も中途半端なのでしょうか。結果的に居眠りした運転士が発覚後も一人で運転していたことについても、「規則には違反していなかった」と強調していますが、もし運転士が再び居眠りしていたとしたら、いったいどのように言い訳したというのでしょうか。乗客の安全を守れない規則なら、意味ないのです。前回の二重事故、そして今回の”二重失態”。呆れるのを通り越して、もはや何とも、JR西日本にはこうしてくれと希望する気力すら起こってきません。 前代未聞の居眠り運転が社会に大きな衝撃を与えた影響で、普段ならほとんどニュースにもならないようなことでも大きく取り上げられるようになりました。JR西日本関係だけを挙げてみてもたくさんあります。まず、3月5日に新神戸駅で山陽新幹線が40mオーバーランしたことが新聞の一面で取り上げられたのをはじめ、3月7日にはJR山陽線、広島・河内駅で寝台特急「なは」が手信号を見落として380m行き過ぎたこと、3月12日にはJR東海道線灘駅で停止位置を168m行き過ぎて停車したトラブル、さらに3月15日には、事もあろうにJR山陽線広島駅で交代予定の車掌が居眠りで遅刻して10分発車が遅れるなど、連日のように”しょーもないミス”が報じられております。 さて、居眠りの原因について話を戻します。3月になって、居眠りした運転士は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性が高いと判明しました。SASとは、睡眠中に気道がふさがり呼吸できなくなることで、脳が覚醒して眠りが分断され、睡眠不足に繋がるという症状です。SAS患者は肥満気味でいびきをかく人に多いのが特徴で、寝起きが悪く昼間にも強い眠気をさすこともあるそうです。特に、不規則ないびきをかくと指摘されている人は注意が必要です。 JR貨物で2月、運転中に意識を失った運転士も軽度のSASであることが分かり、同社では全運転士約2100人にSASの自己診断を行い、症状の該当項目が多い運転士には精密検査を行う方針を明らかにしました。今回の出来事を受けてSASに対する関心が高まり、神戸市交通局やJR東日本でも運転士を対象にSASをチェックすることになったそうです。医療機関への問い合わせも急増しているようです。 この流れは、実は不謹慎ながらKochanの勤める会社にとって大変ありがたいことであります。私の勤めるメーカーでは、SASの診断に用いる酸素飽和度モニタを開発しており、 現在問い合わせが相次いでいるとのことで、医療機器の販売部門がにわかに”HOT”になってきました。皮肉な話ですが、嬉しい限りであります。 再発防止のためには、SASを含めた運転士の健康診断を入念に行うことはもちろんのことですが、今一度、指差喚呼などの基本動作をきちんと行い、普段から連絡・報告・確認などのコミュニケーションを 確実に行うといった安全教育を徹底する必要があるように思います。でないと、いつまでたってもJR西日本には非難の嵐が吹くことでしょう。
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