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Topic 第57話 初歩的なミスの連続〜JR東日本〜 (03/10/11)

 私は最近仕事で、ソフト設計の難しさ、厳しさを改めて痛感しました。難しさ、厳しさといってもそれはプログラムを実際に書くことではありません。製品としてどのような機能が必要で、それをどのような手段で実現するのかを全体からブレイクダウンして、ソフトウェアの役割を決定する。それを踏まえて、どの機能をどの段階で、どんな役割分担でどのくらいの日程でプログラムしていくのかを考える。先日の設計審査で、そうした「構想設計」のレベルが低いと指摘され、分かってはいるもののやっぱりへこんでしまっている次第であります。

 ソフト設計を鉄道の工事に置き換えてみると、「構想設計」がなおさら重要でしょう。不備があると電車が動かないわけですから、失敗は許されません。その意味で、昨今のJR東日本の度重なる”ポカ”は、どのように工事を進めるのかを計画する段階から、どこか”油断”や”慣れ合い”のようなものがあったのではないでしょうか。

 2003年9月27日夕方から28日午前6時にかけて行われる予定だったJR中央線高架工事が配線ミスなどで大幅に遅れ、234本が運休し約18万人が影響を受けました。その後の調査で、設計ミスはもとより、単純な作業ミス、そしてJR東日本の判断の甘さが浮き彫りになったのです。その内容をまとめると…。
・そもそも配線図自体に誤りがあり、事前にチェックしきれていなかった。
・設計や点検も含め、施工業者任せになっており、JR東日本の社員が立ち会っていなかった。
・全作業員を集めてのリハーサルや工事手順の確認ができていなかった。
・工事対策本部のトップが次長クラス、この規模の工事では役員クラスが指揮を執るべき。
・警報機の配線やポイントの電気配線に初歩的な作業ミスがあった。
・トラブル時の指揮系統が明確でなく、現場が混乱した。
・運行再開の代替手段があるのに、原因究明を優先してしまい判断が遅れた。
代替バスが工事終了予定の1時間後までしか予約されておらず、危機管理ができていなかった。
・利用客へのアナウンスが不十分で、トラブルを知らずに駅に来る人もいて混乱に拍車をかけた。

 この内容を見ていただいて分かると思いますが、今回の中央線トラブルは、単なる作業ミスとか判断ミスとか危機管理がなっていないとかが直接の原因ではあるけれども、本当はもっと根の深いところにあって、工事の管理体制そのものに甘さがある、つまりそういう企業体質だったと言うことになるでしょう。少々気持ちがへこんでいるKochanですが、それでも首をかしげたくなるような大失態であります。

 しかし同社は当初、”人災”とも言える不手際を謝罪しつつも、業者任せの管理体制を見直すことについては消極的な姿勢でした。「点検は一義的に業者がする取り決めで、今後、施工会社の監督・指導を徹底していきたい」と述べるにとどまったのです。私は施工や点検を業者が行うことについては問題ないと思いますが、その内容はJR東日本自らがきちんとチェックして、作業にも立ち会うのが当たり前だと思いますよ。自分の会社のお客さんの命がかかっているという自覚をもっと持っていただきたいです。

 運転はなんとか再開できたものの、本当に中央線に乗っても大丈夫かと思うようなことがこの後も次々と起こりました。10月1日は切り替え工事をしたポイントが動かなくなり、電車が1時間以上立ち往生。3日には工事で新設した架線のカバーが燃えて電車が緊急停車。これでは、もっと大きな問題が潜んでいないか不安になります。

 極めつけは、6日の京浜東北線での作業ミス!未明に線路の補修作業をしていた作業員が、ショベルカーの一部を線路上に置き忘れたまま工事を終了し、現場を通過した始発電車が接触。4時間の運転見合わせで、週明けの朝ラッシュが混乱、通勤客に大きな影響が出ました。これも業者任せの体質から生まれた不始末と言わざるを得ません。

 まだあります。9日には武蔵野線で始発電車が車庫から発車できないトラブルがありました。運転士はブレーキ故障と思い込み、2本が運休する事態となりましたが、実は前日の訓練で装着された車止めをはずすのを忘れただけであることが判明。この短期間にJR東日本の作業ミスが相次ぎ、同社に対する批判は高まるばかりです。京浜東北線のミスで追い討ちをかけられた同社の大塚社長は7日の記者会見で、「業者任せということを見直さなくてはならない」と苦渋の表情で語り、改めて陳謝するしかありませんでした。

 要は、人間も機械も完璧ではなく、ミスすることがある。それを前提にしたうえで、どのようにチェックしてミスを未然に防ぐのか、ミスが起きた場合にどうするのかを事前に考えるべきなのです。業者が設計段階で仮に間違えたとしてもそれをチェックして設計ミスを防ぐ、工事前に作業のシミュレーションを綿密に行って作業で注意を要する点は事前に押さえておく、作業には立ち会って計画通りに正確に行われているかをチェック、情報を共有化し適切な指示を出す、それでも万が一のことを考えて利用客への通知や代替手段を用意しておく。工事をするときにはこれだけは押さえておくべきと思います。JR東日本はこうした改善を行っていくと話していますが、逆に言えば今回のケースではどれ一つ取ってもできていなかったことに驚きを感じます。運行再開までに作業ミスに気づいたこと、これがせめてもの救いでした。

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(C)1999-2006 Train Topics


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