| Topic 第64話 繰り返されるホーム転落死 (04/05/03) ●繰り返された悲劇 JR山手線新大久保駅で男性がホームから転落し、この男性を助けようと線路に下りた男性2人の計3人が電車にはねられて死亡するという痛ましい事故があったのは2001年1月26日のことでした。弊サイトでも「第22話 一瞬の勇気に心打たれる」と題して取り上げました。このときの事故を受けて、ホームに設置している非常通報ボタンの周知と転落検知マットの設置を進めていくことになりましたが、私としては駅員が不在だったことに疑問を感じずにはいられませんでした。 その事故から2年8ヵ月後、結局悲劇は再び起こってしまったのです。2003年9月18日、JR京葉線の潮見駅で、帰宅途中の小学1年女児が電車にはねられて死亡しました。事故当時の状況を調べていくうちに、何ともやりきれない気持ちになりました。 女児は潮見駅近くに住んでいて、東京銀座の中心部にある泰明小学校に電車で通学していました。事故当日は午後2時50分に学校を終え、友達と別れた後、東京駅から1人で京葉線に乗りました。問題は潮見駅で降りた後です。確かな目撃証言がないのですが、何らかの理由で線路に下りたか、誤って線路に落ちたかして、ホームへ這い上がろうとした瞬間を約80km/hで走ってきた快速電車にはねられたのです。潮見駅は転落検知マットは未設置でしたが、退避スペースはありました。しかし、7才の女の子に退避スペースへ逃げ込むようなとっさの判断はできなかったのでしょう。非常停止ボタンは押されず、現場は2台の監視カメラにも映らない場所で、結果的には新大久保駅の事故の教訓が何一つ生かされなかったと言わざるをえません。 ●解明されない真相、唇をかむ親 女児が線路に下りた又は落ちた原因は何だったのでしょうか。前述したように確かな目撃証言がありません。女児が電車を降りた時、その電車の車掌は、”けんけん”をしながらホームを進む女の子を見たと証言しています。遺体には突き落とされたときにできるような傷はなく、誤って線路に落ちたか、あるいは落し物を拾うために自分から線路に下りたのではないかとの見方が有力です。「臆病なほど慎重な性格。落し物をしたとしても線路に下りるなんて考えられない」と母親は言います。真相は解明されず、謎は深まります。 最も悔しいことは、女児が今にもホームに這い上がろうとした瞬間をはねられたことであり、もし電車があと数十秒でも遅く通過すれば助かったかもしれません。また、それを誰かが目撃していたら手を差し伸べて助けたり、非常通報ボタンを押して事故を防げたと言うことです。非常通報ボタンは新大久保駅での事故以降、20箇所も新設されましたが、転落検知マットについては退避スペースが確保されているとして設置の対象外でした。 「快速電車が猛スピードで通過するのに、非常通報ボタンと退避スペースだけで安全と言えるのか!?」と父親が唇をかむ気持ちはよく分かります。非常通報ボタンが何十個あったところで、必要なときに押されなければ意味ないのです。 ●人件費がかかるから割り切れる問題なのか? 繰り返される悲劇にもかかわらず、JR東日本は「鉄道各社は合理化を進めており、すべての駅に駅員を配置するのは無理」と駅員の常駐には否定的です。代わりに、線路上を高性能カメラで広範囲に監視し、人が転落した場合、列車を自動的に停止させる「ミリ波転落検知システム」を数年以内に実用化したいとしています。 しかし導入にはまだ年月がかかります。それまでは同様の事故があっても”なす術なし”になってしまいます。人件費がかかることは理解できますし、将来的にそうしたシステムを導入する方向であることは同意ですが、それまでの安全確保が”割り切り”になってしまっても良いとは思えません。暫定的に国や自治体が費用を補助してでも取り組むべき問題と考えます。まして潮見駅は東京駅から3駅しか離れていない都会の駅ですよ。1時間に1本しか電車が来ないような田舎路線で対策して欲しいと言ってるわけではないのですから…。 最近の事例では、子供が回転扉に挟まれて死亡した事故や、回転遊具で遊んでいた子供が相次いで指を切断する事故があり、いずれも製造メーカーや管理者に厳しく責任が問われております。ならば今回の事故も、もっと完全対策について社会全体で議論があってしかるべき問題と思います。 ●子供を電車で通わせるリスク 女児が通っていた泰明小学校は島崎藤村や北村透谷の出身校として有名な小学校で、全児童の9割以上がバスか電車通学と言います。女児も、入学当初の4月は両親が交代で付き添い、5月からは1人で通学していたそうです。 電車は一見安全な乗り物ですが、実は子供にとって通学での電車利用は比較的危険を伴うものであることを認識しておかなければなりません。学校だけではなく通塾も該当しますね。ホームへの転落のほか、電車の乗り間違いがあるかもしれませんし、もっと考えを広げたら誘拐などの凶悪犯罪に巻き込まれやすいなど様々なリスクがあります。子供には勉強を教えるだけではなく、こうした事故や事件から身を守る方法も教えておく必要があるでしょう。今回のケースでは、女児が事故に遭った現場から10メートルほど東京駅方向に歩けば、子供でもホームまで上れる階段があったそうですし、仮に上れなかったとしてもホーム下に退避スペースが設けられていたわけです。ご両親には申し訳ないですが、女児がこのことを知っていたらおそらく助かっていたでしょう。女児の死を無駄にしないためにも、今回の事故を踏まえ、親として子供に何を教えるのが大切なことか、考えていかなければならないと思います。 関連トピック Train Topics、おかげさまで人気上昇中! 第100話までは頑張りたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします。 |
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