
| Topic 第76話 鉄道の信頼を覆す大惨事〜JR福知山線脱線事故Part1〜 (05/05/01) 2005年4月25日、鉄道の安全への信頼を覆す大惨事が起きました。107人(2005年4月30日現在)の命が奪われたJR福知山線(宝塚線)の脱線事故です。電車は、尼崎駅手前の右カーブ(制限70km/h)を100km/hを超えるスピードで進入、大きく傾いて脱線 ・転覆し、マンションに突っ込んでいきました。 1両目に乗っていて助かった乗客の大学生は、「ガラスの破片がいっぱい積み重なっていて、その奥には人がたくさん覆いかぶさっていて、その中には完全に動きの止まっている方もいました」と生々しく証言しています。収益の向上を目指してスピードアップを進めてきたJR西日本の安全対策に問題はなかったのか、厳しく問われているところであります。遺族の悲しみと怒り 、「許せない!」「悔しい、元の姿で返して欲しい」。脱線事故は何故起きたのでしょうか。 弊サイトでは、2005年4月29日に放送されたNHKスペシャル「脱線はなぜ起きたのか〜徹底検証・JR福知山線脱線事故〜」の内容をベースに、Train Topicsにて複数回にわたって、事故の状況や脱線に至った原因・背景、今後の対策についてKochanの見解も交えながらレポートしていきたいと思います。 ●脱線の瞬間、そのとき乗客は… 事故を起こした快速電車は午前9時3分に宝塚駅を発車、尼崎から大阪の中心部を経て、終点である京都府の同志社前駅へ向かう予定でした。事故が起きたのは、東海道線と接続する尼崎駅の1.8km手前でした。 午前9時10分、宝塚駅から2つ先の川西池田駅で、同志社大学の学生が乗車していました。通学するのにいつもこの路線を利用しており、改札に近いことから先頭車両に乗るようにしていたそうです。「普段と同じ1日が始まろうとしていた」。助かったこの大学生2人は、1両目の中央付近でつり革を持って立っていました。 午前9時14分、電車は伊丹駅に到着しました。しかしここでトラブルが発生します。本来の停止位置から40m(60m以上との証言もあり)も行き過ぎて止まったのです。停止位置を修正し、電車は定刻より1分30秒遅れで伊丹駅を出発。遅れた電車はいつもよりスピードを上げて次の駅に向かいました。多くの乗客が「いつもより明らかに速い感じだった」「外の景色の流れるスピードが全然違っていた」と証言しています。 電車は事故が起きた右カーブに差し掛かりました。制限速度は70km/h。しかし電車は既に100km/hを超えるスピードを出していました。カーブの入り口から71mの地点で、右側の車輪がレールから浮き上がり、横転する形で脱線したと見られています。1両目に乗っていて助かった大学生は「急にガタガタと揺れて、何があったんやろうと思って運転席の方向を見ました。その瞬間、電車が倒れるような感じになって、つり革を持っていたのですが吹っ飛ばされて…」「つり革を持っていて揺れても、持ち直すはずが持ち直さないで前の座席に覆いかぶさったと思ったら、後ろに立っていた乗客の人が次々になだれ込んできて…」とその瞬間の状況を語っています。 約580人が乗った電車はマンションに衝突しました。1両目は左に傾きながらマンションの1階に突っ込んでいきました。2両目は車両の側面がマンションに巻きつくように激突、原形をとどめないほどに大破しました。脱線してから衝突するまで、3〜4秒ほどだったと見られています。 駐車場に突っ込んだ1両目。車両は壁に衝突し、前後が大きく押しつぶされました。助かった大学生2人は、電車が傾いた衝撃で左側に飛ばされ、倒れこみました。2人が倒れた車両中央部分だけが原形をとどめていました。「しばらくは何があったか分からなくて目の前が真っ暗という感じでしたが、しばらくしたら光が差し込んできて、左右を見たら車体がグチャッとなっていて、”腕が挟まれて動けない”と言ってる人もいましたし、その奥の方で”助けて〜!”とずっと叫んでいる人もいました。僕の周りの空間は奇跡的に大丈夫だったんですけど…」「”神様、神様!”と言っている方もいましたし、”私はこんなところで死ねないんです”と叫んでいる女性もいました。周辺に動けない方がいて、本当に悲惨な光景でしたね」とこわばった表情で涙をこらえながら語っていました。まさしく”地獄”だったと思います。事故から8分後、この大学生は携帯で110番通報して助けを求めました。「早く来てくれという気持ちが渦巻き、うめいている人に”もうすぐ助けが来るから頑張ろう”と励ましながら20〜30分待ったと思います」。2人の大学生は壊れた窓から地下の駐車場に降り、なんとか脱出することができました。 マンションに側面から衝突した2両目。2両目に乗っていて助かった乗客の1人は、車両中央付近に座っていた座席から車両前方に飛ばされて、右足を挟まれました。「卵のプラスチックの箱を手で握りつぶしたときのようにメリメリと車体が簡単に壊れていくんです。」飛ばされた先には3m四方の空間があり、ここに10人以上の人や壊れた座席などが折り重なっていました。「立っていた人が先に飛ばされていって、座っていた自分が後から飛ばされていきました。結局、先に飛ばされた人の上に僕らが飛んでいったわけです。2両目に乗っていて助かった人が少ないと聞けば聞くほど、助かった人に申し訳ないという気持ちが僕の中にあります」。 107人の命を奪った脱線事故。死者は1両目でおよそ30人、2両目では約70人に上りました。証言では、激突の衝撃で狭められた車内の一部の空間に、大勢の人や車体、壊れたガラスの破片、座席などが絡み合うように折り重なっていたと言うことで、下の方にいた人が救助を求めても簡単に助け出すことはできず、もどかしい思いをしたと話しておられました。 ●勇気を振り絞った乗客の証言 私は当日、昼食時にテレビで事故の映像を見ました。このとき、実は、くの字型に折れて大破した2両目を1両目と勘違いしていました。まさか先頭車両がマンションの下に隠れているとは思いもよらず、家に帰ってから再びニュースで確認し、非常に驚きました。これほどのひどい壊れ方から考えると、死者は10人や20人では終わらないと思いました。 青いビニールシートの上に、負傷者が次々と横たえられている写真もショッキングでした。 NHKスペシャルでは、1両目に乗っていて助かった同志社大学の2人の学生と、2両目に乗っていて足を負傷したものの助かった乗客が、事故の状況について詳しく説明していました。凄惨な現場を目の当たりにして、精神的なショックも相当に大きいと思います。しかし、取材に対し、思い出したくもないことなのに勇気を振り絞って証言していたことは、心を打たれました。事故の真実の姿を少しでも伝えたいという気持ちがあったからだと思います。ただ、こうした取材は、あくまで自発的な証言を受け止めるという心配りが必要で、間違っても民放で一部見受けられるような、興味本位に根掘り葉掘りに質問し、無理から言葉を吐き出させるような強引な方法は慎むべきと思いました。 ●遺族の思い「無念、残念、悔しいです」 事故現場から車で5分のところに尼崎総合体育館があり、犠牲者のほとんどはこの場所に運ばれました。家族の安否を確認するために、連日100人以上が訪れました。 就職活動をしていた大学生も事故に遭いました。胸騒ぎを感じ始めた母親がメールを送りましたが、いつもはすぐ返事をくれるはずなのにこの時返信はありませんでした。メールを送り続けました。体育館に駆けつけた2日目の夜、リクルートスーツを着た遺体と対面する結果となりました。 事故から2日経っても、安否の確認ができない人はまだ多くいました。高校3年生の女子生徒は、USJに遠足に行くと家を出たまま行方が分からなくなっていました。家族は体育館に泊まりこみ、情報を待ち続けていました。この時点で車内には20人くらいが取り残されていましたが生命反応はなく、絶望的な状況でした。事故から4日目の朝、事故に遭った女子生徒は被害の大きかった2両目から遺体で見つかりました。 事故当日の朝も、今までと同じように元気に出かけていったはずです。これからの人生が有望な尊いたくさんの命が一瞬にして奪われました。「無念、残念、悔しいです」という遺族の悲しみは、察するに余りあります。 救出にあたった救急隊員によりますと、押しつぶされた車内では携帯電話がいくつも鳴り続け、液晶画面には「自宅」という表示が出ていたそうです。この救急隊員は、「安否を気遣う家族がかけているのだから、電話に出るべきか迷った。ともかく、一生懸命救出しようと考えたが、心配している被害者の家族のことを思うと、非常に辛かった」と話していました。 ●Kochanの母校の学生にも犠牲者 ここで、改めまして、今回の脱線事故で亡くなられた107人の乗客の方のご冥福をお祈りするとともに、怪我をされた460人の方には心よりお見舞い申し上げます。 Kochanの母校である大阪市立大学に通学していた学生にも犠牲者が2人出ました。前途有望な若い学生の命がこういう形で突然奪われたのは痛恨の極みであります。 次回Part2では、今回の大惨事に至った背景、原因について、今後解明されるであろう、さらなる調査結果をもとに、整理・考察していく予定です。 関連トピック Train Topics 第67話 恐怖の丸太乗り上げ〜JR紀勢線脱線事故〜 Train Topics 第64話 繰り返されるホーム転落死 Train Topics 第61話 異常な光景!中央線開かずの踏切 Train Topics 第57話 初歩的なミスの連続〜JR東日本〜 Train Topics 第50話 新幹線居眠り運転が与えた衝撃 Train Topics 第46話 二重事故、未だに変わらない体質 Train Topics 第40話 電鈴でコミュニケーションを!
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