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Topic 第78話 「泣いたふりして…」発言の波紋〜JR福知山線脱線事故Part3〜 (05/06/04)

 Part3では事故後のJR西日本の対応とマスコミ報道について、今回はKochanの本音で徹底検証していきます。

記者会見での暴言、記者も襟を正せ!

 「何が信頼回復や!もういっぺん言うてみっ!」
 「顔では泣いたようなふりして、心の中でベロ出しとるんやろ。」
 「どのツラ下げて行ったんですか、遺族の家に。よう敷居またげましたね!」

 脱線事故から9日後の5月4日午後3時から始まったJR西日本本社での記者会見は5日未明まで続きました。この言葉は記者からJR西日本幹部に浴びせられた”非難の声”、ではない。ただの”暴言”です。そして、これらはY新聞のT記者から浴びせられた多数の罵声のうちのごく一部です。

 過熱するマスコミ報道に私は違和感を持っていましたが、この記者会見の様子をテレビで見ていよいよ決定的に変だと思いました。記者会見の模様は全国放送されることは記者自身も知っていたはず。もう一度書きます。この発言は、品格のカケラもないヤクザまがいの暴言であり、JR西日本を批判する前に己の襟を正すべきです。

 この暴言に至った背景としては、JR西日本の情報隠蔽体質があったことは事実です。事故原因についても責任を他に求めるような発表を行い、事故後の対応のまずさについても暴露されるまで隠し通そうと言う姿勢が見え見えでした。そんな同社に対し、真実を引き出すために記者が同社の姿勢を正すのは間違いではないでしょう。厳しい追及があってこそ、JR西日本が言いたくない事実を引き出すことができる面も否定しません。しかしです。冷静さを欠いて感情的になり、周囲への配慮もなく暴言を吐く記者の態度は許されるものではありません。一線を明らかに越えています。結局、Y新聞が5月13日付で謝罪記事を掲載しました。

 あの記者会見の状況ではJR西日本側はただただ謝るしかありません。極端に言えば「アホ、バカ、死ね」と言われても反論できないくらいの雰囲気だったでしょう。連日の”糾弾大会”の中でやつれきったJR西日本の幹部と社長を見ていると、精神的に追い詰められた余り誰か自殺するのではないかと心配したくらいです。でも記者の仕事はJR西日本を100万回謝らせることでもなければ自殺するまで苦しめることでもないはずです。もう一度、記者会見の意味と記者が果たすべき役割を考えていただきたいと思います。深夜に及んだ”地獄の問答”同然の”誹謗中傷いじめ大会”が終わった後、週刊新潮5月19日号によればこの記者は「いやあ、吊るし上げるにも体力がいるなあ」と喜んでいたと書いてありますが、まあ、これは週刊誌の書くことですから脚色が大いにされていることを差し引いて捉えることにしましょう。

 そもそも事故当日から何かがおかしかったです。事故の2時間後にJR西日本が最初の記者会見を開いたとき、同社は「脱線の原因は現時点ではまだ分からない状況です」と説明しました。事故発生からすぐ記者会見を行った対応の早さはよかったのですが、事故の状況や原因をほとんど把握しておらず、まだ”踏切事故”と勘違いしていた段階だったのです。事故原因について「まだ分からない」「調査中」を繰り返すJR西日本幹部に対し、この記者は「そんなことないやろ。人が死んでんねんで!」とまくし立てました。

 この日の午後、JR西日本が「現場のカーブは計算上133km/h以上で脱線の可能性がある。電車の最高速度は120km/hなので、速度オーバーが原因とは考えにくい」と説明し、粉砕痕の写真を示しながら「置き石」の可能性を強くにじませる発表をしたことに、北側国交相 は不快感を示しました。航空・鉄道事故調査委員会が数日後に置き石説を実質的に否定したことで、JR西日本の発表が虚偽だったとされ、責任逃れの体質を如実に表していると反感を買いました。しかし、よくよく考えてみますと、事故原因について当初、JR西日本が慎重な説明をしたことに対して、記者 が「人が死んでんねんで!」と不用意に煽ったことで、JR西日本は慌てて物証探しに奔走せざるを得ず、とりあえず見つかった粉砕痕を早々に発表したとも読むことはできないでしょうか。つまり、記者のまくし立てる発言でJR西日本が踊らされ、結果的に真実と異なる方向へ遠回りするように仕向けられたとも考えられます。これでは何のための記者会見なのか、と言いたくなります。

●企業から見たマスコミ対応の重要性

 さて、逆にJR西日本のマスコミ対応ですが、あまりにも貧弱なところをさらけ出したように思います。事故やスキャンダルで最も恐ろしいのはマスコミによる批判報道です。本末転倒かもしれませんが、被害者への対応や賠償・補償による損失よりも、マスコミに叩かれることによる企業のイメージ低下の方がよっぽどか損失が巨大なのは残念ながら事実であります。あれだけの批判報道がされれば、たいがいの会社は間違いなく倒産します。もっとも、JR西日本の場合は嫌だから乗らないわけにはいかない面があるわけでして、潰れることは絶対と言ってよいほどありませんが…。昨今は 「コンプライアンス(企業倫理)」と言う言葉が重要視され、危機管理体制を強化する企業が増えています。危機管理の中でも、天災以外の事故や事件はすべてマスコミの批判報道の対象となり、会社の存続を脅かしかねない最も恐れていることなのであります。事故・事件に対する素早い対応・対策と 、マスコミ批判を最小限に食い止める措置が非常に重要になってきます。

 ところが、JR西日本では事故発生から2時間余りもの間、脱線事故を”踏切事故”と社内放送で伝え続けました。しかも、死者や怪我人が多数出ているといった情報は、社内放送では結局流れることはなかったと言います。この結果、事故当日にボウリング大会と宴会を予定通り行ってしまう経緯の一端となったわけです。そして事故発生から2時間後の最初の記者会見、全然分からないけどとりあえず開いたみたいな状態ではまともな説明はできるわけがなく、私はあの状況では記者会見を開かないほうがむしろよかったと思います。こうした会見に は慣れていないと思います(慣れているのも怖いが)が、単に「分からない」「調査中」を繰り返すのでは記者の罵声を呼び込むだけです。いついつまでを目処に誰々が中心になって調べているとか、せめてそういう誠意ある具体的な情報を持って会見に臨んだ方が良いと思います。

●ひたすら煽るだけのマスコミの実態

 5月3日に、事故列車に乗り合わせていた運転士2人が救助活動せずに出勤し、運転業務を通常通り行っていたと言う驚愕の事実が明らかになると、落ち着きを取り戻し始めた マスコミ報道が一転し、JR西日本への猛烈なバッシングの嵐が始まり、”見せ物”として”消耗品”のごとくあざ笑う”ネタ”に使用しました。ちょっとキツイ書き方になりますが、マスコミがやってきたことを そのままマスコミ流に述べさせてもらいます。

 5月6日のTBS系「みのもんたの朝ズバッ!」の「8時またぎ」というコーナーはみのもんたによるJR西日本批判独演会と化しました。
みの:「本当に何ともコメントのしようのない不祥事不祥事不祥事不祥事の実態です!」
と脂ぎった顔で息巻き、最初に書いた”荒れた記者会見での罵声”のVTRを流しました。大きなボードに貼ってある紙をはがしながら続けます。
みの:「相次ぐ大失態。大惨事を…いいですか、大惨事を知りながらっていうのが僕は許せないんですわ。どうしようもないですよね。そしてボウリング2ゲームやった。さらに2次会に行った。死者が40人超えると発表になりました。レスキュー隊の皆さんがどうしよう、火花が散ったらえらいことになる、どうしたらいいんだと大騒ぎしている。『3次会に行こうじゃねえか』。(死者が)100人になるかもしれない。各局の取材陣が飛ぶ。沿線の周りの市民の人たちが一生懸命助けようと…、そんな中で、『おい、4次会に行こうじゃないか』。」
 このような感じで、事故当時の惨状や救助活動の様子を引き合いに出すことで、いかにも罪が重いことを強調しまくっておりました。

 一方、ワイドショーでは、事故を伝えるニュースや死者数が伝えられる映像を流し、「ちょうどその時」と画面が切り替わり、ボウリングの球が転がるイメージ映像を流して煽る煽る。TBS系では罪の重さを無理から強調するために、ボウリング→1次会と位置づけ、続けて行われた宴会は2次会として扱い、2次会→3次会、3次会→4次会と 勝手に”格上げ”する念の入れようでした。

 そして、これらの煽るだけの報道を正当化するためにどうするか。ここで遺族や被害者の声を利用するのが常套手段です。献花台を訪れた人から「いやあ、そんなんびっくりですね」「JRは何が大切か分かっていない気がするね」というコメントを取り、それを流してさえおけば、放送が 遺族の声を代弁していると受け取ってもらえます。

  みの:「(ボウリング場や宴会の)場所を調べましたらね、事故現場から13kmしか離れていないんですよ。沿線の住民が会社を休んだり工場を休んだり、全社員を”行けー!”って、道具持ってけ消火器持ってけって大騒ぎしている。担架が足りない、それだったらトラックに積む。列車のシートを外してそれを担架にするって大騒ぎしてる最中に、コレです。」
横に座っているコメンテーターの存在意義がほとんどないほどの独壇場でありました。

 さらに、私が理解できなかったのは、ボウリング場や宴会場で根掘り葉掘り調べまくる意味です。ボウリングには43人が参加、15レーンを使用して2ゲーム。ここまではまあいいでしょう。でもわざわざボウリング場の店員を取材し、「歓声はあがってましたか」と尋ねるのはどうかと。聞かれたら「そりゃ、ボウリングやったら普通歓声くらいあがるでしょう」と答えるしかありません。それに、ボウリング大会の賞品は「1位5000円、2位3000円、3位2000円の商品券だった」ってそこまで調べて いちいち放送する意味はどこにあるのでしょう。

 宴会には22人以上が参加、2次会や3次会の事実があった。そこまではいいでしょう。でも、宴会料理の内容をわざわざ調べ、「ビールや焼酎が飲み放題の”あじわいの宴”、焼きそばや揚げ豆腐、まぐろなど8品目にデザートのシャーベットがつく1人3500円のコース」とまでいちいち放送する意味はいったいどこにあるのでしょう。はっきり言って安いと思いますけど。しかもどこから入手したのかご丁寧にレシートまで出してきて、「30人分で4月25日16時28分、108486円」。ここまでわざわざ放送する意味をあえて見出すとすれば、視聴率稼ぎのためのウケ狙いとしか思えません。もっとよく考えてみると、労力をかけてここまで情報収集したのは、もしかしたらJR西日本の発表以上の不祥事が出てくるのではないか、もっと面白いネタが転がっているのではないか、叩いたらさらに埃が出るのではないかという狙いがあったからなのかなあと勘繰ったりしてしまいます。

 最後に、運転士の乗り逃げ事件について、遺族の声が次のように締めくくりました。「”残る”と言えない体質、”残れ”と言えない体質、これがJR西日本の体質そのものだ」。

マスコミ報道・取材の弊害はいろんなところに…

 こうしたJR西日本の落ち度をあげつらうだけのジジ汚い一部の報道姿勢は、多くの弊害を生みました。まず、関西圏内ではJR西日本、私鉄如何に関わらず、置き石や自転車などの障害物が線路内に置かれる事件が多発しました。あるテレビ番組では某タレントが「そんなもん、人口一億二千万人もおったら、やる人ぐらいおるわな」と大失言し、司会の爆笑問題の2人が「置き石は重大な犯罪です」と慌てて警告する一幕もありました。危ない危ない。JR西日本の不祥事を理由に置き石が容認されたらとんでもないことになります。

 そして、JR西日本の乗務員を狙った悪質な嫌がらせが120件を超えていると言います。運転席後方の窓ガラスに「命」と書いた紙が逆さに貼られるのが6回以上もあったそうです。「人殺し!」と叫んだり…、悪趣味としか言いようがありません。他にも、女性運転士が足をけられ、ホームから転落しそうになったり、駅員が顔を殴られたり、コーラの缶を投げつけられたり…。こんな卑怯な愚か者が世の中に多数いることが情けないですね。はっきり言って殴る蹴るのレベルになると、「暴行罪」や「威力業務妨害」で立件してもおかしくない犯罪行為であります。

 なのに、TBS「朝ズバッ」では、「確かに悪いことだけども、JR西日本社員全員が黒の腕章をつけて喪に服するくらいじゃないと、嫌がらせはなくなりませんよ」ですって。おいおい、便乗した犯罪行為の責任の一端までJR西日本に負わせるつもりなのでしょうか。「何でもかんでもJR西日本のせいにして悪者にしておけば、この世の中安心じゃ」ってそんな風潮はないですか。

 取材する姿勢に思慮が足りないのは過去の事件・事故と全く同じ、教訓が十分活かされているとは言えません。遺体が安置された尼崎総合体育館を訪れる遺族に何人もの記者が寄ってたかり、「誰をお探しですか?」「今のお気持ちは?」と聞く。体育館に入るときは一刻も早く対面したいのだからそっとしておいてあげて、出てきたところで取材しようと 考えた記者もいたようです。しかし、他のマスコミ各社が一斉に取り囲みに行けば、自分だけ指をくわえて見ているわけにいかなかったと苦悩したそうです。こうしたメディアスクラムと呼ばれる集団過熱取材になった場合、どのような方法で防止・回避すべきか、共通のルール作りが必要ではないでしょうか。

 遺族の家には記者が代わる代わる取材に訪れました。「疲れきったときにまたチャイムが鳴る」と苦痛を訴える遺族。そして、献花台では何十人もの報道陣が待ち受け、訪れた人が泣き崩れようものなら「どなたに献花をされたんですか」「どなたのお知り合いですか」と一斉に取り囲む。こんな状態なので、せっかく献花台の近くまで来ながら、多くの報道陣を見て途中で引き返した人もいたそうです。報道する使命と遺族や関係者の心情との間で生じたあつれき、これはマスコミ各社の間で十分検証し、どういう対応をすべきだったか検討していくべき大きな問題と思います。


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