Topic 第98話 JR大船渡線と競走!?〜探偵!ナイトスクープ〜(06/08/28)

 人の足が電車の速さに挑む…。朝日放送の人気番組「探偵!ナイトスクープ」では、その”無謀”とも言える戦いにかつて何度も挑戦(第63話)してきました。そして、今回はJR大船渡線を舞台にした感動巨編が2006年4月21日に放送されました。

 「岩手県を走るJR大船渡線の千厩(せんまや)駅から陸中門崎(りくちゅうかんざき)駅間は大きく迂回していて、距離が鉄道だと26kmもあるのですが、直線を結ぶ道路だと約12km。もし千厩駅で乗り遅れても、その直線道路を必死に走れば、なんとか乗り遅れた列車に追いつき、乗り込むことができるのではないでしょうか。試してください。」と言う依頼。

 線路が迂回しているので、走れば電車より早く着くのではないかという類似の内容は過去にもありました。1995年3月24日に放送されたJR飯田線、下山村〜伊那上郷間での競走です(「Train Topics 第63話 電車と競争4」に記載)。こちらは電車が6kmを最短で12分で走りますが、道路ならば約2kmです。体力 に自信のある人であれば走って十分間に合うと思います。

 しかし、今回の場合は、千厩〜陸中門崎駅間26kmを38分で走る列車に、約12kmの道路を走って追いつこうとするわけですから、飯田線とはスケールが全然違います。フルマラソンを走る選手に匹敵するくらいのペースで12kmを走らないと間に合わないわけですから、圧倒的にこちらの方が難しいと思います。

 カンニング竹山隆範探偵が、市役所の千厩支所で紹介された地元期待のランナー、千葉裕司さんにお願いしたところ、快く引き受けてくれたのでした。彼は高校卒業間近で 、東京の大学に進学して街を離れるため、壮行会を兼ねて街をあげて応援することに。話がいきなり大きくなってきました。

 さて、舞台は千厩駅前。たくさんの人が千葉さんの高校最後の雄姿を見ようと応援に駆けつけ、上空には撮影のヘリコプターまで出動、7台のカメラを駆使すると言うスケールの大きなロケになりました。

 千厩駅から陸中門崎駅までの途中5駅の発車時刻時に相当する距離を、コース上にチェックポイントとして設けることで途中段階で列車に勝っているか否かを比較することに。チェックポイントについて説明する竹山探偵ですが、折りしも2月か3月の寒い時期、そして大観衆が見守るロケと言うことで緊張したのか、うまくしゃべることができません。そこへツッコミを入れながら応援に加わったのが見習い探偵の小出水直樹と宮田てつじ。小出水探偵は電車担当、てつじ探偵は給水ポイントの担当で、それぞれロケをサポートします。

チェックポイント
千厩     12:53  道路0.0km
@摺沢   13:03  道路3.1km
A柴宿   13:09  道路5.0km
B猊鼻渓  13:13  道路6.3km
C陸中松川13:17  道路7.5km
D岩ノ下  13:22  道路9.1km
 陸中門崎  13:31   道路約12km

 「18年間育った町なので、期待に応えられるように頑張りたい」と話す千葉さん。駅前には着物を着た(やや年配の)女性が集まり、踊りで応援しています。そんな中、12時53分に列車は千厩駅を発車し、同時に千葉さんもスタートを切り、熱いバトルが始まりました。千葉さんの父が竹山探偵と車に乗り込み、声援を送ります。沿道にはたくさんの人が詰めかけ旗を振りながら、「地元の”裕”」として知られる千葉さんを応援していました。

 一方、電車は迂回しつつも、結構速い速度で走っており、電車からレポートする小出水探偵には早くも不安がよぎり始めました。そして、第1給水ポイントにはてつじ探偵が先回り。街の人たちの応援したい気持ちが高じたのか、大量の水とまんじゅうが用意されていました。間もなく千葉選手が元気よく走ってきて、水を受け取った後、まんじゅうには目もくれずに走り去っていきました(笑)。「気持ちは伝わったと思いますので…」と苦笑いのてつじ探偵。1つ目の駅、摺沢(すりさわ)駅の時点で千葉さんの方が33秒先行。竹山探偵曰く「列車よりも速い男、千葉裕司!」。ところが…。

 コースは登り坂に差し掛かり、さらに向かい風もあって千葉さんのペースが落ち始めます。風除けのランナーを併走させる作戦に出ますが、3つ目の猊鼻渓(げいびけい)駅では逆に40秒遅れてしまいました。向かい風に苦しむ千葉さんは、4つ目の陸中松川駅の時点では1分遅れと少しずつ遅れが拡大し、列車に追いつくことに黄信号がともりました。「電車に負けてるぞ!頑張れ!」と千葉さんのお父さんが車から拡声器で檄を飛ばします。しかし力走する千葉さんも苦しそうな表情です。

 電車はついに最後の駅を出発し、陸中門崎駅へ向かうのみ。竹山探偵は懸命に千葉さんを応援しますが、「列車に追いつくうんぬんよりも自分との戦いかもしれない」と勝負を諦めたともとれる弱気な発言も。沿道では街の人に加え、幼稚園児までポンポンを振りながら声援を送っています。残りは2km、あともうひと頑張りです。

 しかし、電車は無情にも陸中門崎駅に一足先に到着。「えらいこっちゃ、すごい人や」と小出水探偵。駅には多数の人が待ち受けていましたが、列車に間に合うのは絶望的かと思われました。ところが運転士さんによると、交換列車が遅れているので、発車が2〜3分遅れるとのこと。かすかな希望が見え、駅前に集合した竹山・小出水・てつじ探偵のテンションが上がります。

 そして、遠くの方から千葉さんの姿が見えてきました。交換列車が着いたら即座に出発です。「裕司、急げ!!」、絶叫する竹山探偵。沿道の人たちも「間に合うぞ」と励まします。駅を目前にしてまだ交換列車は来ません。「奇跡が起こりました!!」、必死に走ってきた千葉さんは駅前の人たちの大声援の中、列車に転がり込むように乗り込みました。諦めかけた勝負をモノにできた喜びはひとしおでしょう。ちょうどそこへ交換列車が入ってきました。大きな歓声と拍手に応えるため車内からおじぎをする千葉さん。

 「今の気持ちは?」と聞かれ、千葉さんが発した言葉は「風強かったです」。その言葉に代表されるように、向かい風の中で苦しいレースでした。しかし、その天候が影響したのか対向列車も遅れてしまい、幸いにも時間を稼ぐことができたのです。一躍ヒーローとなった千葉さんはきっと、街ぐるみで応援してくれた地元の人たちに感謝し、かけがえのない一生の思い出を胸に、東京へ旅立ったことでしょう。


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